労働保険の年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。
労働保険の年度更新は、
①前年度、すでに支払っている保険料を精算するための「確定保険料」の申告と納付
②当年度の「概算保険料」を納付するための申告
を同時に行います。
原則として、4月から翌年3月までの1年間の「賃金」総額に、定められた保険料率をかけて算出し、概算で前払いすることになります。
年度更新の手続きで「賃金」を集計する時いつも疑問に思うんですけど…
なぜ「通勤手当」が含まれるんでしょうか??
では「賃金」とは何か?を理解してみましょう!
なぜ「通勤手当」が労働保険の年度更新の「賃金」に含まれるのか?解決の手がかりになりますよ。
労働基準法では
労働基準法第11条では、
と規定しています。
つまり、給料・〇〇手当・賞与・その他、、、名称がどんなものであれ、労働の対価として使用者(会社)が労働者に支払うものが「賃金」とされています。
具体的には、労働協約・就業規則・労働契約などにより、支給要件が明確に定められていて、従業員側に請求権があるものはすべて労働の対価として「賃金」になります。
ここで、通勤手当を支払うかどうかは義務ではなく会社の判断によるものです。
一般的に、通勤手当は労働協約や就業規則・労働契約でその支払い条件が明示されており、したがって「賃金」に含まれるわけです。
もう少し深堀りしてみましょう。
使用者が労働者に支払うすべてのもの
労働基準法において、労働者対使用者の関係が生ずるのは、両者の間に使用従属関係が成立する場合です。
そして、この使用従属関係の下で行われる労働の対償として使用者が労働者に支払うものが「賃金」です。
例えば、ホテルマンが客から受け取るチップは「賃金」では無いですね。
労働の対償として
労働の対償とは、必ずしも成果や貢献度に対応するものではありません。
労働契約などで支給要件が明確に定められていて、労働者に請求権があるものが労働の対償としての「賃金」となります。
使用者と労働者は、原則として労働契約を結びます。
①労働契約とは、労働者が使用従属関係下におかれて使用者に労務を提供し、その対価として「賃金」を受け取る(使用者は支払う)契約のことであり
②つまりは、労働契約に基づいて支払われるものは、労働の対価たる「賃金」とされるわけです。
したがって、労働契約に基づき支給条件の明確なものは、通勤手当や住宅手当なども含めて、すべて労働の対償としての「賃金」となります。
もう少し感覚的に言うと、
労働者が本来負担すべき通勤手当を支払ってまで会社で働いてもらっている
⇒その通勤手当は労働の対価であると考えられる
ということですね。
一方、任意的なもの・恩恵的なもの・実費弁償的なものは「労働の対償」ではないとされ、「賃金」には含まれません。
名称の如何を問わず
物価手当や生活保証金など、パッと見て労働と直接関係ないような名称であっても、労働の対償として使用者が支払うものであれば、すべて「賃金」に該当します。
あくまでも実態に沿った内容で判断する必要があるというわけですね。
厚生労働省による例示
厚生労働省は、「賃金」ではない手当の例示を以下のように挙げています。
●休業補償費
●退職金
●結婚祝金
●死亡弔慰金
●災害見舞金
●増資記念品代
●私傷病見舞金
●解雇予告手当
などの任意的・恩恵的なもの
●出張旅費・宿泊費等
などの実費弁償的なもの
●制服
●会社が全額負担する生命保険の掛金
●財産形成貯蓄のため事業主が負担する奨励金等
などの「労働の対償」ではない恩恵的なもの
●住居の利益(借り上げ社宅制度などで社宅等の貸与を行っている分)
ん~、「賃金」かどうかの判断は「例外的に賃金にならないもの」に着目して判断するのがよさそうですかね?
はい、実務的にはその判断方法がオススメです。
通勤手当や住宅手当などは「賃金」から除外できるのでは?と考えてしまいがちですよね。
労働保険の年度更新の際には、「賃金」とはなにか?を理解したうえで、正しく集計しましょう。